解散後ギターリストとして歩こうと決めたものの、そうそう仕事はなく壁は厚かった。
それでも小泉さんがアグネスチャンのレコーディングによんでくれたり(柏原芳江でヒットした「紅茶のおいしい〜」アグネスがオリジナル)ドラムの敏男が5番目のフォーライフと呼ばれた「川村ゆうこ」のライヴに呼んでくれたりしたが、「川村ゆうこ」は自分の唄の下手さに止めてしまい、マネージャー氏が同じ事務所の「木ノ内みどり」のテレビやライヴに呼んでくれたんだが、あっと言う間に引退。
ついてないの連発。
暇してても仕方ないので俺は友人達とのセッションに明け暮れていた(超貧乏でいつも適当な事いっては家賃ごまかしてた)この頃、ショーグンのケーシー・ランキンやベルリンのロバート・ブリル達が音楽仲間だった。
その内に誰かが「トムの原宿の家、部屋あまってるじゃん!ルームメイト置かない?家賃も半分になるし」と紹介してくれたのが後にバブルガム・ブラザーズでギターを弾く事になる「カズ」だった。
彼のバイトは青山に越してきた超有名作家であり、もとパイロットのあの人が出所後に闇ブローカーとしてストリッパーを国外からスカウトしてマネージメントしてた時の通訳。
夜中の2時をまわると香港、シカゴ、サンフランシスコから国際電話が毎晩のように来た。
そして奴が遊びに行っていなかったりすると俺が出るはめになるんだけど、なんだか通じてしまって、いつのまにかバイト2号になってしまい、国内にいる仕込んだストリッパーの苦情から小屋へのオーダーもするようになってしまって、デタラメ英語でどんとこいの毎日になっていた。
そんなある日の午後、寝ぼけ声で電話に出るとロバートからの電話で「佐藤準にかわる」と。
そして「久しぶり、トム今何やってんの?これから箱根までこれない?ギター持って」って何言ってんだか寝ぼけた頭には良くわからない。
「どういうこと?」
「今、箱根のロックウエルスタジオで丸山圭子のアルバム録ってんだけどさ、ギターいないんだよ。
ロブがトム呼ぼうって言うから電話してんだけど、これない?」
目が覚めた。起き上がり座りなおして「俺、車ないし、譜面だってすぐ読めないし・・・」
「大丈夫、スタッフ指示したところに迎えに行かせるから、それに心配しなくても合宿だから何回でもやればいいじゃん」て事で、カズのアンプを借りてエピキュラスの駐車場で事務所スタッフと合流。
電話を切って1時間後には箱根へ向けて車の中にいた。
レコーディングは3日間で、俺は着替えも持たずギターだけをぶら下げていった。
周囲のミュージシャンに助けられて録音は終わり、帰りは準の車だったと思うけど、車中で「トムこの先なんかあんの?」の質問に「な〜んもない」「じゃ〜、彼女のツアー行かない?今メンバーのオーディションしてんだよ」「ほんと、オーディションに受かればツアー行けんの?」「ば〜か、レコーディングメンバーにオーディションするわけないじゃん、じゃ明日エピに行ってリハ始めてよ」
な〜んと簡単に決まってしまった事だろうか。
翌日、金もないので原宿からは歩いてエピまで行った。
ついてすぐにマネージャーがレコーディングのギャラをくれた。
「うわっ、袋ふくらんでる!」
「少ないですか?」
「とんでもない、ありがとうございます〜、今夜はまともな飯食えます!」
「明日から、タダで食えますよ、月末には袋何倍も膨らんでますよ」
「お〜、よろしくお願いします」
とリハは始まり、ミュージシャンとしての生活のスタートラインに立ったのである。